手術とレーザー治療について
当院では様々な手術を行っています。
また、レーザーの、出力・照射条件(連続照射、パルス勝者、単発照射)・ファイバーの種類・ファイバーの先端部分のアクセサリーを変えることで、様々な治療に使用しています。
手術の前に
手術を行うためには全身麻酔が必要です。
全身麻酔はその性質上100%安全なわけではありません。体に異常があると当然リスクは高くなります。
また内部から進行する病気や先天的な病気は単純に外見だけでは判断できないものも多くあります。
そこで、当院では出来るだけ安全に手術や歯石除去等を行うため、麻酔のリスクを確認するための術前検査セットをお勧めしています。
避妊手術
高齢期になるとホルモンの分泌異常がおこったり、生殖器そのものが病変となり、全身に悪影響を及ぼす恐れがあります。
これらを予防するためにも避妊手術をお勧めします。当院の避妊手術では、卵巣と子宮を摘出しています。
メリット | 犬 |
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猫 |
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デメリット | 犬猫 |
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卵巣腫瘍
加齢に伴って卵巣腫瘍の発生は増加します。しかし2~3歳の若い犬にもみられます。
腫瘍化した卵巣は、ホルモンバランスの異常を起こし、様々な症状を引き起こします。
症状は不規則な性周期、持続性の発情、毛並みの悪化および脱毛が起こり、大きくなると食欲不振、嘔吐などの消化器症状もみられます。
乳腺腫瘍
5歳以上になると乳腺腫瘍を発症しやすくなり、ピークは10歳前後となります。
乳腺腫瘍の発生率は、手術していないメス犬と比べ、初回発情前に避妊手術を行なうと約0.05%、2回目の発情までに避妊手術を行なうと約8%、3回目の発情まででは約26%、その後は変わらないといわれています。
当院では生後6ヶ月~初回発情前の避妊手術を推奨しています。
乳腺腫瘍は、犬では良性:悪性=50%:50%、猫では70~90%が悪性といわれています。
摘出手術後、病理検査で判断します。
手術前
手術後
摘出された乳腺腫瘍
子宮蓄膿症
子宮内に細菌(大腸菌、レンサ球菌、ブドウ球菌など)が感染し膿が貯留する状態です。
発情期後や老犬に発生しやすい病気です。
症状としては、陰部から分泌物(膿汁)が出る、発熱、多飲多尿、お腹が膨らむなどで、進行すると、嘔吐や下痢、食欲不振、元気消失、腎不全などから死に至ります。
治療は、感染した(卵巣)子宮摘出術のほか、血中に入った細菌を抗生物質や点滴で治療する必要があります。
妊娠を希望しないならば、若く体力があるうちに避妊手術をお勧めいたします。
去勢手術
高齢期になるとホルモンの分泌異常がおこったり、生殖器そのものが病変となり、全身に悪影響を及ぼす恐れがあります。これらを予防するためにも去勢手術をお勧めします。
メリット | 犬猫 |
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デメリット | 犬猫 |
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摘出された精巣
陰睾
精巣(睾丸)腫瘍
6歳以上の犬に多く見られます。
陰睾が腹腔内で腫瘍化した場合は、腫瘍がある程度まで大きくならないと症状は現れません。
症状は腹囲膨満、元気や食欲の低下などがあります。
鼠径部など腹腔の外にある場合では精巣の腫大と硬結がみられ、ときには痛みを伴うこともあります。
セルトリ細胞腫では皮膚や被毛の代謝異常を起こして、脱毛、皮膚炎を起こします。
また乳頭が腫大して雌性型乳房になることがあります。
摘出された精巣腫瘍
(左)萎縮した精巣
(右)腫瘍化した精巣
肛門周囲腺腫
肛門周囲腺腫とは、去勢手術をされていないオスの老齢の犬に多い病気です。
猫の場合は肛門周囲腺が無いのでこの病気はみられません。
この病気は、肛門の周囲にある分泌腺に発生し、しこりのような腫瘤が1つ〜多数みられます。
発生する部位が肛門周囲であることや、去勢していない雄犬に多く見られることなどが特徴です。
さらに、この病気は去勢した犬では発生がほとんどみられないことから、男性ホルモンが関与していると言われています。治療は外科手術で切除することが一般的です。
また、その時に一緒に去勢手術をお勧めします。
肛門周囲の腫瘍
前立腺疾患
6~7歳を過ぎた頃から、特に去勢していないオス犬では、前立腺肥大、前立腺嚢胞、前立腺膿瘍、前立腺腫瘍などの前立腺の病気が増えてきます。
前立腺は膀胱の後方で尿道を取り囲むように存在し、精液の主成分を産生しています。
老化に伴う男性ホルモンのバランスが崩れることが要因の1つと考えられています。
前立腺疾患の初期はほとんど症状が見られません。
前立腺肥大が進んだり、嚢胞・膿瘍が大きくなると、尿に血が混じっていたり(血尿)、尿が出にくかったり(排尿障害)、しぶりや便の形状変化、便が出にくい(排便障害)などの症状がみられます。
去勢済みのオス犬で前述のような症状が現れた場合、前立腺腫瘍の疑いが強まります。
前立腺肥大の治療は、去勢手術が効果的です。
前立腺腫大
会陰ヘルニア
会陰部(肛門と泌尿生殖器の開口部周囲)を囲む筋肉群が萎縮して隙間が生じ、腸管・膀胱・大網などの腹腔内蔵器がお腹の外にはみ出すことを会陰ヘルニアと言います。
未去勢の高齢オスがなりやすいので、男性ホルモンの関与が考えられています。
筋肉の隙間に腸が飛び出した場合には、便秘や排便困難が見られるようになります。
稀ですが、膀胱が飛び出した場合には、膀胱が反転するため排尿障害が見られます。
症状があり肛門の横が膨れていた場合、会陰ヘルニアの可能性があります。
手術前
手術後
皮膚腫瘍
発生頻度は年齢とともに増加する傾向があり、8〜10歳によく発生します。飼主さんがなでたり、毛づくろいをする際に、“しこり”に触れたり目についたりして発見することがあります。
腫瘍として体表に盛り上がっている場合には簡単に発見出来ますが、長毛の犬や皮下組織など深部の腫瘍などでは発見が遅れることが多いです。
良性か悪性か見た目では判断できません。また良性でも、自壊すると二次感染を引き起こし、全身へ悪影響を及ぼします。皮膚腫瘍は細胞診や切除後の病理診断をおすすめします。
メラノーマ
皮膚腫瘍手術前
皮膚腫瘍手術後
皮膚組織球腫消失
耳血腫
原因はいろいろありますが、外耳炎やアレルギーで耳を引っ掻いたり、耳を振った際にぶつけたりすることで起こります。
耳たぶに内出血を起こし、その内部に血液または血液を大量に含んだ液体が溜まり、ふくれあがることを言います。
自然治療する例もまれにありますが、疼痛を訴え首を傾げたり、耳を気にして首を振る、引っ掻くなどの症状がでます。
溜まった血液を抜いてもまた溜まります。
何度も抜くことを繰り返すと耳翼がひだ状に硬結し変形して治ります。
耳の形の保持、早期治療を望むのであれば手術をおすすめします。
猫の耳血腫
耳血腫手術
手術後
両耳耳血腫
会陰ヘルニア
会陰部(肛門と泌尿生殖器の開口部周囲)を囲む筋肉群が萎縮して隙間が生じ、腸管・膀胱・大網などの腹腔内蔵器がお腹の外にはみ出すことを会陰ヘルニアと言います。
未去勢の高齢オスがなりやすいので、男性ホルモンの関与が考えられています。
筋肉の隙間に腸が飛び出した場合には、便秘や排便困難が見られるようになります。
稀ですが、膀胱が飛び出した場合には、膀胱が反転するため排尿障害が見られます。
症状があり肛門の横が膨れていた場合、会陰ヘルニアの可能性があります。
手術前
手術後
椎間板ヘルニア
椎間板は脊椎に加わる衝撃を吸収する働きを持ちます。この椎間板が脊髄に向かって飛び出し、脊髄を圧迫する状態が椎間板ヘルニアです。
椎間板ヘルニアが犬で起こりやすい場所は胸椎と腰椎の移行部(背中)と頚椎(首)です。
■ ハンセン1型
ダックスフンド、コーギー、ビーグルなどの軟骨異栄養性犬種では、2歳頃には椎間板が変性します(髄核は硬くなり線維輪は弱くなる)。
変性すると椎間板の衝撃吸収能が損なわれ、そこに負荷が加わると線維輪から髄核が飛び出し、脊髄を圧迫します。ハンセン1 型ヘルニアの多くは3~6歳までに急性に発症します。
■ ハンセン2型
ヨークシャーテリア、マルチーズ、プードルなどの犬種では椎間板が加齢に伴い変性し、過形成した線維輪が脊髄を圧迫します。このタイプの椎間板ヘルニアは老犬に多く起こり、慢性的に経過します。
治療としては、内科療法と外科療法があります。
椎間板ヘルニアによる脊髄の圧迫が軽度な場合は内科療法(絶対安静、消炎剤など)で経過を見ますが、後に椎間板ヘルニアが再発し脊髄障害が重症となる危険性があります。
外科療法は全身麻酔をかけ、レントゲン脊髄造影法・MRIなどによって椎間板ヘルニアの発生部位を確認した後、脊髄を圧迫している椎間板を取り除く方法です。ただし深部痛覚が消失してから48時間以上経過すると、手術をしても正常に歩けるように回復する可能性は低くなります。
臍ヘルニア
臍ヘルニアとはいわゆる「出べそ」のことです。
出生後腹壁が完全に閉じず、皮下に腹腔内の脂肪などが飛び出している状態です。
成長とともに腹壁が自然と閉じて治ることもあります。
しかし、飛び出したものが押しても腹腔内に戻らず、血行が阻害され壊死するおそれがある場合や、内臓(腸)が飛び出し閉塞を起こす場合は緊急手術が必要です。
押して腹腔内に戻る場合は、避妊手術などと同時に整復手術を行なうとよいでしょう。
鼠径ヘルニア
足の付け根(鼠径部)にある隙間から、お腹の中の臓器が飛び出てしまった状態をいいます。
隙間が大きく腸や子宮、膀胱といった腹腔内臓器などが入り込んで場合、またヘルニアが小さくても妊娠を希望する場合は外科手術が必要です。
その他、過度の肥満によってヘルニアが拡大する可能性があるので太らせないようにしましょう。
鼠径ヘルニアで膨らんだ足の付け根
口腔腫瘍
口腔内に発生する腫瘍で、良性・悪性を問わず犬によく発生します。
発生の初期で腫瘍が小さい時は症状があまりみられません。
しかし腫瘍が進行して大きく成長したり、腫瘍塊が自壊したり、細菌感染がおきると、よだれ、痛み、飲み込むことが困難になるなどの症状がみられ、体重減少につながるなどします。
また悪性腫瘍が骨や軟部組織へ浸潤すると顔のかたちが変形してしまうことがあります。
悪性腫瘍では腫瘍が下顎や頸部のリンパ節へ移転し、しこりとして触われることもあります。
治療は外科手術で切除するのが一般的です。進行した悪性腫瘍では、広範囲に切除する必要があるため、術後に顔の形が変わってしまうことがあります。
歯周病
歯磨きなどを行なわないと歯の表面に歯垢が付着して、それが次第に歯石に変わります。
歯垢中の歯周病菌によって歯周組織(歯肉、歯根膜、セメント質、歯槽骨)に炎症が起こる病気を歯周病といいます。犬猫の三歳以上の約80%に認められます。
歯周病には歯肉炎と歯周炎の2つがあります。
歯石・歯垢が蓄積して、歯と歯肉の間(歯周ポケット)に入り込み歯肉炎が起きます。
歯肉炎を起こすと歯肉が赤く腫れ出血しやすくなります。
更に進行すると歯周ポケット内で細菌が繁殖して、歯肉以外の歯周組織にも炎症が波及して歯周炎となります。その頃には口臭・痛みが出てきます。炎症が続くと歯を支えている歯槽骨が溶けて歯がぐらついてきます。
その他にも進行すると、根尖膿瘍や口鼻瘻管や下顎骨骨折が起こることがあります。
歯垢は歯磨きで落とせますが、歯石や歯周ポケットに入ってしまった歯垢・歯石は麻酔をかけないと取れません。また歯のぐらつきが大きいと歯を残すのが難しくなってきます。
歯垢から歯石に変わるスピードが早いので(犬:3~5日、猫:5~7日)、歯磨き(Q&A)が大切になってきます。
歯の表面に付着した歯石
乳歯遺残
根尖膿瘍・口鼻瘻管・下顎骨骨折
根尖膿瘍とは、根尖(歯の根の先)の周囲まで細菌が侵入して膿が溜まることです。骨が溶けており、頬が腫れたり、頬の皮膚が破けて排膿されることがあります。
口鼻瘻管とは、主に上顎犬歯で歯周病が進行し、骨に穴が開いて口腔と鼻腔が貫通した状態です。
鼻からの出血や膿鼻水やくしゃみなどが見られます。
下顎骨骨折は、下顎臼歯の歯周病により下顎骨が重度に溶けてもろい状態の時、硬いものを咬んだりして起こります。
根尖膿瘍で頬が腫れ上がった様子
歯折
歯折とは歯が折れることで、原因はいろいろありますが、特に犬では硬いもの(牛のひづめなど)を咬むことで、猫では物にぶつかったり落下事故により折れることがあります。
歯折した時に歯髄が露出すると、強い痛みがあります。
またそこから細菌が進入し新たなトラブルになります。
(細菌が全身に移行すると、心臓・肺・肝臓・腎臓などに害を及ぼすといわれています)
折れた前臼歯
前十字靭帯断裂
前十字靭帯は後肢の大腿骨と脛骨を結んでいる靭帯のひとつです。
前十字靭帯が断裂すると後肢に体重がのせられず、歩行時に足先を少しだけチョンと着地させるか足を挙げたままになります。数日で痛みがひく場合もありますが、膝関節が不安定なため、将来的には半月板損傷や変形性骨関節症につながることがあります。
原因としては、老化による靭帯の脆弱化、事故、激しい運動、肥満などです。
治療は「内科的治療法」と「外科的治療法」があります。
内科的治療法では安静や抗炎症薬などで炎症が治まるのを待ちます。
しかし大型犬や体重が重い場合は外科的治療法が選択されます。
他の靭帯や人工物で前十字靭帯を再建する方法、関節外側から膝関節を安定させる方法、脛骨の形を変化させ大腿骨を固定する脛骨高台部水平化術(TPLO)など様々な方法があります。
関節外法
膝蓋骨脱臼症候群
後肢の膝蓋骨(ひざの皿)が正常な位置から内方や外方にはずれた状態を膝蓋骨脱臼といいます。
初期は無症状の場合が多く、進行するとだんだんと跛行することが多くなります。
また両後足に起こるとO脚またはX脚になります。
原因として、先天性と後天性があります。先天性は、生まれつき膝関節のまわりの筋肉や骨・靭帯の形成異常などがあるもので、特にトイ・プードル、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア、チワワ、マルチーズなどの小型犬によく見られます。後天性のものでは、打撲や高所からの落下などによる外傷などが原因となります。
グレードⅠ | 膝蓋骨は正常な位置にあり、足を伸展させて膝蓋骨を指で押すと脱臼するが、放すと自然に整復される。このレベルだと無症状の場合が多いが、ときにスキップ様の歩行をすることがある。 |
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グレードⅡ | 膝関節は不安定で、寝起き時のように膝関節を屈曲していると脱臼し跛行したりするが、指で膝蓋骨を押すと整復できる。このレベルでは数年間、日常生活に支障はないが、さまざまな症状を呈しながらも骨の変形が進み、膝蓋骨を支える靭帯が伸びてグレードⅢに移行してしまう。 |
グレードⅢ | 膝蓋骨はつねに脱臼状態にあり、指で押せば整復できるがすぐに脱臼してしまう。 多くは、膝関節を屈曲させたまま歩行するので顕著な跛行がみられる、大腿骨や脛骨の変形も明らかになってくる。 |
グレードⅣ | 膝蓋骨はつねに脱臼し、指で整復出来ない。大腿骨や脛骨の変形もさらに重度となり犬は患肢を屈曲させ、うずくまった姿勢で歩行するか前肢に体重をのせ、患肢を浮かせたように歩行する。 |
治療は、膝蓋骨を正常な位置に戻す手術を行います。
進行して変形性骨関節症が起こっている場合には手術に適さないことがあり、痛みを和らげるための内科的治療が行われます。そのため手術はなるべく早期に行うことが重要です。
先天性の膝蓋骨脱臼を予防することは難しいため、この病気を持つ犬は繁殖させないようにすることが勧められます。
正常時
脱臼時
脱臼時
膝蓋骨脱臼
変形性骨関節症(DJD)
DJDは、関節の変形や痛みがおこる病気で、原発性と続発性に分けられます。
原発性は加齢にともなって多く見られます。
またゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバーなどの大型犬種では、股関節形成不全から二次的に変形性骨関節炎になりやすい傾向があります。
初期症状は、関節が痛いため、起き上がるのに時間がかかる、階段を嫌がる、歩行異常などです。
進行すると、捻髪音が聞こえたり、関節可動域が狭くなるなどの症状が現われます。
治療は消炎剤で痛みを緩和し、体重制限と運動療法で症状の進行を抑えます。
また関節軟骨保護成分のサプリメントも良いでしょう。
若い頃から、肥満に注意することが大切です。
また、無理な運動はできるだけ控え、足腰になるべく負担をかけないようにしましょう。
骨頭切除
レッグ・ペルテス(大腿骨頭への血行が阻害され壊死してしまう病気で、成長期の小型犬に多い)、大腿骨脱臼を何度も繰り返す症例などでは治療として大腿骨頭切除手術を行ないます。
体重の軽い小型犬に適応されます。
壊死した骨頭
骨折整復
骨折とは骨に損傷をきたす事です。骨折の原因は、交通事故や高所から落下するなどの外的要因で起きる「外傷性骨折」と、骨腫瘍やクル病などの内科的疾患が原因で骨がもろくなり簡単に骨折してしまう「病的骨折」があります。骨折すると激しい痛み、骨折した部分の腫れや熱感、運動機能不全を起こします。
骨折の治療は、骨折部位や程度、犬の年齢や体重などによって、さまざまな方法を選びますが、基本は骨折した骨をもとの正常な位置に戻し、骨が再生してくっつくまで、プレートやピンとワイヤーや創外固定などの手術方法で固定します。
普段からリードをつけて散歩する、しつけをしておくなどで事故を未然に防ぎましょう。
また、太らさないよう普段から食事管理を徹底し、適切な運動をとることも大切です。
ギプスやスプリントなどの外固定
■ メリット
・費用が安い。
・骨折の変位が少なく、若齢で骨の修復が早いと予想される場合や、 他の固定方法と組合わせて使用する。
■ デメリット
・かなり高い確率で変形癒合や癒合不全が生じる。
・治療期間が長くかかる。
・ギプスにより皮膚に褥瘡、周囲関節の拘縮や関節可動域の減少、跛行の永続などの問題が生じる可能性がある。
ピンとワイヤー
■ メリット
・手術の中では費用が安い。
・関節骨折や成長板骨折などの特定の部位では第一選択となる。
■ デメリット
・骨折タイプや部位、動物サイズによっては固定力が十分でなく、癒合不全や変形癒合が生じる可能性がある。
創外固定
■ メリット
・初期の手術費用がプレートなどに比べて安価である。
・骨折の治癒過程により、固定力を調節できる。
・骨折の治癒が完了したら、通常はすべてのインプラントを除去することができる。
■ デメリット
・固定器具が体外に存在するため、動物がぶつけるや噛むなどのため器具の破損などの問題が生じる可能性がある。
・刺入しているピンに緩みや感染が生じることがある。
・ピンの消毒や固定器具の調節などのため、複数回の麻酔が必要となる。
プレート
■ メリット
・安定した初期強度が得られるため、ほとんどの骨折治療において最良の選択肢となる。
・迅速な無痛化をもたらし、早期の活動が再開できる。
・早期の活動により、周囲の関節や筋肉などへの骨折の影響を少なくできる。
■ デメリット
・他の手術と比べて高価である。
・プレート直下において骨吸収が生じる場合がある。
骨折時
プレート固定後
プレート固定
股関節脱臼(包帯法とトグルピン法)
大腿骨骨頭が骨盤より逸脱した状態のことで、骨頭の変形、靱帯の断裂など様々な原因があります。
いずれにしても歩行困難になります。
治療方法としては、以下の方法があります。
1.包帯法
2.トグルピン法(人工靱帯による整復)
3.骨頭切除
1.包帯法
股関節を正常の位置に戻した上で固定包帯を行い、安静に保ち、経過を観察・入院します。しかし包帯をしっかり固定しすぎると皮膚に褥瘡が生じる可能性があります。また包帯をすこしゆるめに装着すると簡単に再脱臼をおこすことがあります。なかなか包帯法での維持が難しいこともあります。
2.トグルピン法
トグルピン法は、人工靱帯を使って骨盤と大腿骨をつなぎ止める手術です。自身の骨頭を温存することが可能であるため、解剖学的に正常により近い形に再建でき、それに伴って関節の機能も正常に近い動きとなります。また、術後も骨頭切除と比較するとより早く普段の生活に戻る可能性が高い方法といえます。
しかし、術後早期に人工靱帯が切れたり緩んだりしてしまうと、脱臼が再発する可能性があります。関節包が再建されるまでの間、通常3週間~6週間は厳密な運動制限などにつとめる必要があるでしょう。
股関節脱臼手術前
トグルピン整復手術後
両側トグルピン整復手術後
3.骨頭切除
骨頭切除についてはこちら
リハビリテーションとアイシング
1.リハビリテーション
(リハビリ)
病気の動物に対して、できるだけの機能を回復させ元の生活に復帰できることを目的に、リハビリを通常の外科療法や投薬・注射などの内科療法に加えて行っています。
リハビリの効果としては、疼痛緩和、炎症緩和、筋肉の萎縮を最小限にとどめる・予防やする、筋力・持久力・関節可動域等を改善する、心血管系~全身の状態を改善する、などが挙げられます。
体重負荷訓練の様子
手術後個々の症例にあわせてリハビリテーションのプログラムを作成・実施しています。
2.アイシング
患部を冷やすことは血管を収縮させ血流を低下させるため、急性障害時に抗炎症効果や疼痛緩和、浮腫の軽減、筋痙攣の減少などに効果的です。手術後はもちろん、リハビリ後の筋肉・関節などにも行うことがあります。
アイシングの様子
椎間板ヘルニア手術後の
アイシングの様子
半導体レーザーとは
半導体レーザーとは、半導体素子(電気を良く通す良導体と電気を通さない絶縁体の中間的な性質を利用した電子部品)を発光源とするレーザーのことで、CDや光ファイバー、携帯電話などで広く用いられています。
当院では、獣医科用 新世代半導体レーザー DVL-20とH1レーザーの2種類を用途に応じて使用しています。
レーザーの ●出力 ●照射条件(連続照射・パルス照射・単発照射) ●ファイバーの種類 ●ファイバー先端部分のアクセサリーを変えることで、様々な治療に幅広く使えます!
新世代半導体レーザー DVL-20 で行う施術
止血(シーリング)・切開
体表の小腫瘤の蒸散・切除
体表のイボを全身麻酔もしくは鎮静、局所麻酔で手術することが可能です。
切除部位や蒸散部位は出血もなく縫合糸も必要ありません。
動物への負担を軽くすませることができます。
蒸散(皮膚腫瘍)
切除(皮膚腫瘍)
体ICGを併用した凝固蒸散治療
CG(インドシアニングリーン)という色素が、レーザー光を良く吸収することを利用した治療法です。
ICGを患部に注入したり、塗布した後、レーザーをあてます。
ICGを注入した部分にレーザー光(熱)を集中させることで、周囲の正常な組織のダメージを減らします。
内部に注入する。塗布する。
ICGにレーザー光(熱)が
吸収される。
選択的な凝固、蒸散する。
指間嚢胞に照射
疼痛緩和
リンパ球の分裂・増殖抑制による消炎効果、化学物質の受容器結合力の低下、興奮伝導の抑制、血管拡張や血液量の増大などによる鎮痛効果が認められています。
× 閉じる歯周病治療
3才以上のペットでは約8割が歯周病です。
口臭がしたり、進行すると歯周ポケットが出来て歯がぐらぐらしたり、ご飯が食べれなかったりします。
歯周病治療では、まず歯周ポケットより歯石を除去後、歯周ポケットにファイバーを挿入し照射することで、デブリートメントと殺菌をして歯肉の引き締めを行います。
歯周ポケットに
ファイバーを挿入し照射
緑内障治療
緑内障とは、眼の中にある眼房水が溜まりすぎて眼圧が上昇して、痛みや失明を起こす病気です。 初期であればレーザーを強膜上から照射し毛様体に照射することによって、 房水の産生抑制と排泄促進が行われ、緑内障の治療となります。
× 閉じる逆さまつげ治療
逆さまつげ治療の外科的治療は大きな浸襲を伴いますが、レーザーで毛根部を組織破壊することで半永久的に脱毛ができます。
× 閉じるレーザーサーミア
レーザーファイバー先端を腫瘍内に差込み、レーザーを照射するだけです。
レザーを照射することにより腫瘍内の温度が上昇します。
腫瘍細胞は42度から生存率が下がりますが、正常細胞は43度から生存率が下がってきます。この差を利用した治療です。
死んだ細胞は生体内の食細胞の食作用で体内に吸収され消滅します。
口腔内腫瘍に照射
マイルドレーザーサーミア
出力調整したレーザー光をモーターの回転によって分散させて外部から拡散照射します。
これにより、組織侵襲を最小にしながらのマイルドな温熱治療が可能になりました。
この他にも以下のメリットが報告され応用しています。
・腫瘍周囲の血管を拡散させて、抗がん剤の腫瘍内の取り込みを強める
・腫瘍に栄養を送る血管が新たにつくられることを抑制する
・体の免疫力を高める
肺腫瘍に照射
創傷治療促進
H1レーザー で行う施術
疼痛緩和
創傷治癒
歯周病