外部寄生虫について

ノミは散歩に行かなくても寄生する可能性があります。
帰宅時にズボンの裾などにつけて持って帰ってきたり、庭先などに野良猫が持ち込んできたり、たまの散歩で偶然うつされたりするかもしれません。
一度感染すると痒いだけではなく多くの病気を引き起こします。
しかも退治するのは大変です。“百害あって一利なし!”付かないように予防することが大切です。

マダニは、草の先端に付いていて犬・猫が草むらを通るときに付着して寄生します。
動き回らないので始めは気づきにくいのですが、吸血後は200倍にも大きくなることがあり、耳や顔面にぶら下がっている小豆大のマダニを見つけることもしばしばです。

ノミ

ノミの寄生の有無

毛をかき分けた時すばやく動く黒ゴマみたいなものがいれば、ノミの可能性が高いでしょう。 また、ノミ糞(黒い砂粒状で水に付けると赤茶色に溶け出す)が見つかれば、ノミが寄生しています。
もしノミを見つけても潰してはダメです。
潰すとノミの虫卵が飛び散ることがあります。

テープなどに貼りつけにするか、薄めた中性洗剤に沈めて失神させトイレなどに流してください。そして動物病院でノミ予防&駆除薬をもらいましょう。

ノミの寄生の有無

ノミの予防&駆虫

ホームセンターなどで市販されているノミとりシャンプーや滴下剤は、ノミを『死滅』するのではなく『失神』させるだけだったり、有機リン化合物が含まれていて動物の体自体に危険なものだったりします。
予防&駆虫には動物病院専用薬を使いましょう。
もしノミがいたら、今まで生活していた環境(寝床は勿論、遊び場、お気に入りのソファやクッションなど)にノミの卵・幼虫・蛹が落ちているので徹底的に掃除をしてください。
完全に駆虫するには3ヶ月はかかるともいわれています。また多頭飼育の場合、1頭だけ予防&駆虫しても他の子から感染するので、全員に予防&駆虫をしなくてはいけません。

ノミの予防&駆虫
ノミの成虫(上)・ノミ糞

薬剤には犬用、猫用がありますが犬に猫用、猫に犬用は使わないでください。
代謝が違うので毒性が発現する場合があります。

ノミと関係する病気

・ノミアレルギー性皮膚炎

ノミが吸血する際に唾液が注入され、この唾液の成分にアレルギー反応をおこして起こる皮膚炎です。皮膚を激しく掻きむしるために、細菌の二次感染を起こしたり、脱毛してしまうことがあります。ノミが寄生してなくてもノミ1匹に1ヶ所刺されるだけでおこる場合があります。

ノミアレルギー性皮膚炎

・瓜実条虫(サナダムシ)の媒介

ノミが寄生している動物は高確率で瓜実条虫に感染します。
ノミをグルーミングなどで食べてしまい、ノミの体内にいた瓜実条虫がうつります。瓜実条虫は多数の片節からなるヒモ状の虫です。約1ヶ月で成虫となり、その後、瓜実条虫卵のつまった片節がちぎれて便と一緒に出てきます。
「お尻に白ゴマみたいなものが付いている」とか「肛門周囲で米粒みたいなものがうにうに動いていた」のはおそらくこの片節でしょう。
ヒトにも感染します。1才前後の小児は、はいはいしたりして床に口が近いので、感染しやすいといわれています。

・猫ヘモバルトネラの媒介

ヘモバルトネラとはマイコプラズマの一種で、猫の赤血球表面に付着して溶血性貧血を起こします。
溶血性貧血とは、赤血球が溶けるように壊れて貧血になることです。

猫ヘモバルトネラの媒介

・猫ひっかき病(バルトネラ菌)の媒介

猫ひっかき病とは、バルトネラ菌を持った犬や猫に咬まれたりひっかかれたりすることで感染するヒトの病気です。傷口の化膿や腫脹、長期の発熱や痛みを伴うリンパ節の腫脹、全身倦怠、関節痛、嘔気等を引き起こします。
免疫不全の人や、子供、免疫力の落ちた高齢者では、重症化して肝膿瘍を合併したり麻痺や脊髄障害に至るものもあります。
ノミの吸血によってバルトネラ菌が犬や猫に感染しますが、犬や猫は一般に無症状です。
まれですがバルトネラ菌を持ったネコノミが人間を刺して感染するという場合もあります。

・貧血

1匹1匹の吸血量はそこまで多くはないですが、塵も積もればナンとやら。
大量に寄生されると貧血をおこします。特に衰弱した動物は注意しましょう。

マダニ

マダニの予防&駆虫

マダニを発見して取ろうとしても、マダニの口器が皮膚に深く差し込まれているので、容易に取り除くことができません。
無理に引っ張るとマダニの口器が皮膚の中に残って腫れて皮膚炎を起こしてしまうので、動物病院専用薬を使い予防・駆虫しましょう。

マダニ

マダニと関係する病気

・ 犬のバベシア症

マダニの吸血の際にバベシアという原虫が犬の体内に侵入し、犬の赤血球内に寄生します。
犬の赤血球内に寄生したバベシアは、次々と赤血球を破壊します。
症状は主に40℃を超える発熱と重い貧血で、貧血がひどくなると肝臓や腎臓の機能障害を起こし、命に関わることもあります。
一度感染するとバベシアを完全に除去できる治療薬はありません。したがって、犬のバベシア症の予防=バベシアを媒介するマダニの感染を予防することがとても大切です。
マダニの吸着から約48時間で感染するといわれていますので、マダニを見つけたら急いで動物病院で予防&駆除薬をもらいましょう。

・ライム病(ボレリア)の媒介

ライム病は、マダニに吸血されボレリア(スピロヘーターの一種)をうつされることで感染するマダニ媒介性疾患です。野生動物では感染しても無症状ですが、ヒトでは発熱やけいれん、関節炎、起立不能、歩行異常や神経過敏などの臨床症状を引き起こします。

・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

SFTSウイルスを保有するマダニが犬・猫・人などを吸血する際に感染する「マダニ媒介性人獣共通感染症」です。ヒトではマダニに咬まれてから1~2週間程度の潜伏期間を経て、発熱、食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛、時に重症化すると頭痛、筋肉痛、けいれん、リンパ節腫脹、咳、出血症状(紫斑、下血)を起こします。致死率は20~30%と高く、山へ行く、草刈りをするなどの際は長袖長ズボンで肌の露出を控えましょう。(別途PDF参照)
ネコちゃんは食欲不振などの類似症状や黄疸を呈します。また感染しているネコちゃんからヒトへの感染も見られることがあり、ネコちゃんの室内飼育をおすすめします。
ワンちゃんは不顕性感染が多いため、マダニ予防だけでなく草むらに入らない注意が必要です。

担当:春日部獣医師

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